おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第42章 幸せのアフター6。
「俺は厨房で何か作ってるから、達哉の分も宜しくな?」と、お父様は言うと、奥の厨房へと引っ込んでしまった。山岡さんは「俺は客だぞ」と言いながらも、川上さんにもビールを注ぎ、アタシの為にシェーカーを振ってくれた。その姿が格好良くて、アタシは暫く、うっとりと見惚れてしまう。その横で川上さんが、張り切り過ぎだと言って山岡さんを揶揄うと、山岡さんは少し顔を赤くして「煩いぞ」と川上さんを睨んだ。
山岡さんが作ってくれたのは、「ヴァージンブリーズ」と言うカクテルで、クランベリージュースとグレープフルーツジュースを混ぜたものだった。甘くなくてさっぱりとした味わいで、ゴクゴク飲んでしまいそう。
お父様が奥で調理をしている間、山岡さんはジャケットを脱いで腕捲りをし、カウンターの中で他のお客さんの対応をしていた。山岡さんを知っている常連のお客さんは、「いっちゃんの作ったアレが久し振りに飲みたいねぇ」なんて言って、未だ、自分のグラスにお酒が残っているのに、新たな一杯を注文する。前に来た時もそうだったけど、山岡さんて皆さんに可愛がられてるんだなぁと思って、微笑ましく思った。
「ヤマから聞いてたぁ? ここでバイトしてたの……」
川上さんにそう尋ねられて頷くと、川上さんは「そうかぁ」と言ってから、少し何かを考えていた様だったけど、アタシはカクテルを作る山岡さんに見惚れていて、川上さんの様子には気付かなかった。