おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第42章 幸せのアフター6。
「おっと! 着いたよ。降りよう?」
乗り換えの駅に地下鉄が到着すると、そう言って山岡さんがアタシの腰に手を回す。アタシは促されるままに電車を降り、地元に向かう電車に乗り換えた。
山岡さんはご実家を出て、アタシの家の近くにマンションを借りて一人暮らしをしている。近くと言っても、一駅あるんだけど。山岡さんが引っ越して来てから、朝の出勤時は山岡さんと川上さんと三人で電車に乗っている。
山岡さんは、「自分が守るから付き添いはいらない」と平川さんに言ったのだけれど、どの電車に乗ろうと自分の勝手だろうと言われてしまい、結局、毎朝三人で通勤する事になってしまった。
でも、それが何だか心苦しい。平川さんの気持ちを知っていて、目の前でイチャイチャする事も出来ないし。って朝の電車の中で、そんな事をしたら、平川さん以外の人にも迷惑だよね。だから、お目付け役として、平川さんが居てくれるのは、正解なのかも知れない。けれど、やっぱり心は痛む。どんなに想ってくれていても、平川さんの気持ちに応える事は出来ないから。
「モリリン? ほら、行くよ?」
考え事をしてボーっとしていたアタシの手を、山岡さんは逸れない様に握って歩き出す。いつの間にか、山岡さんが住むマンションのある駅に着いていたらしい。