おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第7章 坂内龍弥という男(その1)。
ベッドを囲う様に引かれた、白いカーテンの向こう側では、先生とアタシを運んでくれた男の人が、何かを話しているみたいだが、小さな声でよく聞こえなかった。
やがて、扉が開閉する音が聞こえると、そっとカーテンを引く音が聞こえ、アタシを運んでくれた男の人が、入ってきた。
(一人になりたいのに)
そう思ったのだが、親切にアタシを心配して運んでくれた人に、そんな事を言うのは失礼だと思い、何も言えない。何となく二人きりの空間が気まずくて、アタシは寝たふりをする事にした。寝返りを打つ振りをして、男の人に背を向ける。
「森脇さん、寝てるの?」
そう言うと、男の人はベッドの脇に置かれた椅子に座った。そして、「寝たままでいいから、聞いてね」と前置きをし、一人で話始めた。
彼は先ず、自分の名前と所属を明らかにした。AD部部長の坂内 龍弥(バンナイ リュウヤ)さんという人だった。
AD部は、会社の部署として公にはしておらず、ホームページにも載っていない事。それでも、知っている人は知っていて、毎年、希望する人が多い事。その殆どが、多数の人とエッチが出来るからという目的の為、商品開発は二の次で、真面目に仕事に取り組んでくれない事。
そんな事をぽつりぽつりと話す坂内部長。アタシはそれを寝た振りをしながら、黙って聞いていた。