おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第7章 坂内龍弥という男(その1)。
「下出君はね、面接の時に自分でデザイン画を描いてきて、プレゼンしたんだ。その熱意を買って、面接官の満場一致でAD部に起用する事が決定した。そして君はね、僕が推薦したんだ」
そう言うと坂内部長は押し黙る。そして、暫しの沈黙の後、またぽつりぽつりと話始めた。
「大人のオモチャに全く縁のなさそうな君を推薦した理由はね、そういう人にも興味を持って貰えるオモチャを作りたいと思ったからなんだ。そうじゃないと市場が拡大していかないからね」
「でも、決め手は、面接の時に全然話せなかった君が、最後に振り絞るように「こんな自分でも、誰かの役に立ちたい。誰かを笑顔にするオモチャを作りたい」って言った事かな?」
「何とかして内定を取りたい一心で言った言葉かも知れないけど、結構、僕の胸には響いたよ。「この子と仕事をしてみたいな」って思ったから、人事部にかけ合って採用してくれるように頼んだんだ」
そう言うと坂内部長は、立ち上がり布団を掛け直してくれた。
「でも、君を傷付けてしまったみたいだね。本当にすまないと思うよ。やっぱりキツかったよね。まさか、初日からこんな事になるとは、思っていなくて……。僕の監督不行き届きだよ」