おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第43章 予兆。
俺が話す間、マスターはグラスを磨きながら、黙って聞いてくれていた。俺が話し終えて、ふーっと息を吐き出し、ブラントンを一口含むと、マスターは顔を上げて俺を真っ直ぐに見て言った。
「十年近くも一人で悩んでたのか? 馬鹿だな……。お前さんがそんなんじゃ、友達も成仏出来ないだろう? もう、十分だろう。友達を解放してやれよ……」
「解……放……?」
「お前さんは、恋愛に本気になれないのを、友達の所為にしてないか? 何だかんだ理由をつけて、逃げてるだけなんじゃないのか?」
「そんなっ……つもりは……」
「別に恋愛が人生の全てじゃないし、恋をしたくないって言うのならば、それでもいい。だけどな? お前さん、さっき一徹達が仲良さそうに帰っていく後ろ姿を、羨ましそうに見てただろ? 本当はお前さんだって恋がしたいんだろ? って言うか、本当はもう始まってるんじゃないのか?」
「え……?」
「だから話したくなったんじゃないのか? 俺はそう感じたけどね」
マスターはそう言うと、煙草に火を点ける。肺いっぱいに煙を吸い込み、何かを思案する様に目を細めて。そして、マスターは煙草の煙を吐き出すと、再び口を開いた。