おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第43章 予兆。
「お前さんの友達が、どんなヤツだったのかを俺は知らないけど。俺がお前さんの友達だったらさ、「いい加減にしやがれ」って言うね。「自分が前に進めないのを俺の所為にするな!」ってね」
そう言うとマスターは、もう一服、煙草を吸い込む。俺はブラントンのグラスを見つめながら、マスターの言った事を考えていた。俺は自分が恋愛出来ないのをアイツの所為にしているのだろうか。いや、そんなつもりはない。唯、友達の彼女は駄目だと思っているだけで……。
「達哉の好きな子って、珠子ちゃんなんだろ?」
突然、マスターにそんな事を言われて、俺の心臓はドキリと跳ねる。「へっ!?」なんて、素っ頓狂な声を上げて、マスターの顔を見上げると、マスターはニヤリと口元を吊り上げた。
「お前さんさ、自分じゃ気付いていないのかも知れないけど、あの子を見る時の目、一徹と同じだぞ? 愛しそうに見つめてさ……」
「そんなんじゃあないよ……。そりゃあ、可愛い後輩だと思ってるけどさぁ……」
「一徹の彼女だから、自分の気持ちを誤魔化そうって思ってるのか? 友達の死を理由にして逃げて……」
「別に逃げてなんて……」