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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第43章 予兆。


 小百合と言うのは、ヤマが可愛がっている妹ちゃんで、現在、小学校一年生。その母である彼女は、百合(ユリ)さんと言って、俺の記憶が正しければ、現在は専業主婦をしている。彼女が言うには、ヤマは引っ越し先を一人で決めてから、家族にそれを話したのだと言う。そして、その話をした翌日には、引っ越し業者がやって来て、荷物を運び出してしまったのだそうだ。それで、小百合ちゃんは心の準備が出来ていないまま、ヤマが出て行ってしまったものだから、寂しがっているのだと、彼女は言った。

 引っ越し先を聞いてどうすると言うのだろうか。家族なんだし、会いたければ電話をして遊びに来る様に言えばいいのではないかと、俺は思うんだけどな。

 「それがね、偶には帰ってきなさいって言ってるのに、顔を見せに来ないのよ。だから、今日は家に引っ張って行こうと思って来たんだけど……。ちょっと遅かったみたいね……」

 百合さんは、そう言って溜息を一つ吐いた。ヤマが家を出てから、未だ、一カ月も経っていないし、ヤマからして見れば、そんなに直ぐに帰る必要もないだろうと思っているのではなかろうか。小百合ちゃんの様な子供からして見れば、毎日会っていたのに、急にいなくなってしまった兄を想い、寂しくなるのは分かるけれど。

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