おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第44章 突然の訪問者。
「んー? お兄ちゃんの大事な人だよ?」
山岡さんは、右側のストラップを外し終えると、左側に取り掛かりながら、そう答える。釦で留めるタイプではないらしく、華奢なストラップのバックルは小さくて、山岡さんの大きな手では、とても外し難そうだった。アタシは代わってあげようかと、山岡さんの肩をチョイチョイと突くと、山岡さんは「大丈夫だよ」と言う様に、振り返ってニコッと笑った。その瞬間、小百合ちゃんの目が、アタシを睨む様にスッと細められ、アタシの背中にゾクッと冷たい電流が走るのを感じた。
過去に散々、浴びせられた視線。特に女の子達に。多分、アタシは小百合ちゃんにとって、邪魔な存在なんだ。過去にアタシを邪魔者扱いした女の子達と同じ目をしているもの。
それはそうだろう。生まれた時から一緒に居て。ずっと仲良く遊んでくれたお兄ちゃんなのだ。それを急に横から奪われたら、面白くないのも当然だと思う。でも、それって本当に兄妹関係の嫉妬なんだろうか。彼女の目は、なんだか既に恋を知っている女の人の目みたいだ。
「ねえ、お兄ちゃん? 小百合は? 小百合はお兄ちゃんの「大事な人」じゃないの?」
「ははは。勿論、小百合も大事な人だよ。小百合は家族だもんな?」
ストラップを外し終えた山岡さんは、そう言うと小百合ちゃんの頭を撫でて立ち上がる。そして彼女の腋に手を差し込むと、ヒョイと彼女の身体を持ち上げて立たせた。