おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第44章 突然の訪問者。
扉の向こう側では、山岡さんが小百合ちゃんに向かって、離れる様に言い聞かせている。しかし、彼女は離れようとしないらしく、声に困惑が含まれているのが、その声音で感じられた。可愛がってきた年の離れた妹を、無下に扱う事も出来ないのだろう。分かってはいるけれど、なんだか小百合ちゃんに負けたみたいで、悔しい。
このまま、ここで山岡さんの声を聞いていたら、泣いてしまいそうだ。そう思ったアタシは、身体の震えが止まると、バッグを両手で抱えてエレベーターの前まで走った。降りる為にボタンを押し、籠の到着を待っていると、扉の開く音が鳴り、扉の隙間から女の子の鳴き声が響く。バタバタと近付いてくる足音。その音が止むと、ギュッと後ろから抱き締められた。
「ゴメン、珠子。本当にゴメン」
「いいよ。いっちゃん。偶には小百合ちゃんと遊んであげて?」
「でも……」
「来週は一緒に過ごそうね? 夜に電話するから……」
アタシはそう言うと、丁度開いたエレベーターの扉の中へと身体を滑り込ませる。山岡さんの後ろを見ると、小百合ちゃんが泣きながらこちらを見ていて。彼女を泣かせたのは、アタシなんじゃないかと罪悪感に苛まれた。