おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第45章 絡まる糸(その1)。
「失礼します」と言って入って来たのは、平川さんだった。どうやら、池田先生からの電話を取ったのは、平川さんだったらしい。先生は平川さんに、朝っぱらからどうしたのかと尋ねると、平川さんは、坂内部長から書類を預かって来たと言って、A四判の封筒を先生に差し出す。先生はそれを受け取ると中身を確認し、「確かに受け取りましたと、坂内部長にお伝え下さい」と言って、平川さんに向かってニッコリと笑みを見せた。
「それと、部長から森脇さんの様子を見て来いと言われたので……」
平川さんはそう言うと、アタシをチラっと見る。そして、池田先生に、「僕にもコーヒーをご馳走して下さい」と言って、ニコニコ笑いながら椅子に腰を下ろした。池田先生は、小さな溜息を一つ零すと、平川さんにコーヒーを淹れたマグカップを渡す。平川さんはそれを笑顔で受け取ると、「頂きます」と言ってカップに口を付けた。
(ううっ……。居た堪れない……)
寄りにも寄って、池田先生と平川さんが顔を合わせるなんて。平川さんが池田先生の事をどう思っているかは分からないけれど、池田先生は平川さんの事をあまり良く思っていないのは知っているから。それだけでなく、アタシが山岡さんを好きで、付き合っているのを知った上で、アタシを想ってくれている人達だから。