おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第45章 絡まる糸(その1)。
「ちょっ……ちょっと待って下さい!! 先生、それだけは嫌です!! お願いします。他の事なら何でも言う事を聞きます。だから、それだけは勘弁して下さい。お願い……」
アタシはそう言いながら、腰を捻って身体を上へとずらし、注射器から離れようと試みる。けれど、両腕をベッドに括り付けられている上、ベッドヘッドがあるのだから、限界がある。アタシの頭は直ぐにベッドヘッドに当たって、それ以上は上に身体をずらす事が出来なくなってしまった。池田先生は、そんなアタシの足掻きをクスクスと笑いながら見て言った。
「へぇ? 何でも聞いて下さるんですか? それでは、週に一度は私の家に治療を受けに来て下さいね? その条件を呑んで頂けるのでしたら、これは止めて差し上げますよ?」
池田先生の言葉に、アタシはブンブンと勢いよく頭を縦に振る。普段から、少しだけお腹が緩めのアタシに、そんな物を投薬された日には、暫くの間、とんでもない事になりそうだ。それだけは、是が非でも回避したい。
先生はアタシが頷くのを見ると、「約束ですよ?」と念を押してきた。アタシはそれに再び頷くと、先生は注射器を洗面器の中に入れた。池田先生とアタシの会話を黙って聞いていた平川さんは、「池田先生だけ狡いですよ」と言って、頬を膨らませる。今まで感じた事がなかったけれど、案外平川さんて子供っぽい所があるんだな、なんて考える余裕があるのは、最悪の事態を何とか免れる事が出来たからだろうか。
「何を仰っているんです? 貴女は仕事でいつでも森脇さんに触れる事が出来るでしょう?」