おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第46章 訪問者、再び。
いつもと変わらないけれど、慌ただしく過ぎていく一週間。待ちに待った金曜日の夜。「先週の埋め合わせをしよう」と山岡さんから部屋に誘われた。
勿論、アタシは二つ返事で頷き、お泊りセットを携えて山岡さんの部屋を訪れる。夕食は外で済ませたアタシ達は、翌朝の朝食の食材を買い求めて、深夜まで営業しているスーパーを訪れる。
本当はちゃんとした和食の朝ご飯を食べて貰いたいのだけれども、山岡さんは「簡単なものでいい」と言って、トースト用の食パンや卵、ベーコン、サラダ用のレタスやトマトをカートに入れていく。
折角、山岡さんに食べて貰いたいと思って、最近では朝食の準備を手伝ったりしているのに。そう零すと、山岡さんは、「和食は時間がかかるだろ? その間、くっついてらんないじゃん?」と言って、ニッコリと笑顔を見せるものだから、アタシの胸はキュンとしてしまった。
通勤時も会社でも一緒なんだけれど、二人きりで過ごせる時間は限られているから。二人きりの時は、ずっとくっついていたい。そんな風に想っていたから、山岡さんも同じ気持ちで居てくれた事が嬉しかった。
商品をレジに通し、会計を済ませて店の外に出てみれば、金曜日の夜だからなのか、未だ人通りも多く賑わっていた。ストリート・ミュージシャンが、駅の高架下やロータリー等で、楽器を演奏しながら自作の歌を披露していて、とても賑やかだ。でも、近隣に迷惑じゃないんだろうかと思って見ていると、山岡さんに「気に入ったの? 聴いてく?」と訊かれてしまった。