おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第46章 訪問者、再び。
どのくらい意識を失っていたのかは分からないけれど、髪がまだ湿っていたから、そんなに長い間ではなかったのだろう。額に冷たい感触を感じ、ゆっくりと瞼を押し上げると、アタシはベッドの上に横たわっていた。
「珠子、気が付いたか? ごめんな? やり過ぎちまって……」
そう言って山岡さんがアタシの顔を覗き込み、冷たい手で頬を撫でる。眉間には心配して顔を顰(しか)めていたのだろう。皺が刻まれていた。
「アタシの方こそ、ごめんね? 心配掛けちゃった……」
頬を包む冷たい掌に自分の手を重ね、頬擦りをしながらアタシはそう言う。額には冷たい濡れタオルが載せられている。山岡さんの手が冷たいのは、きっとその濡れタオルを作ってくれたからなのだろう。
「もう、大丈夫だよ?」
そう言ってタオルを外して起き上がろうとすると、山岡さんは「無理するなよ」と言ってアタシの肩を押してベッドに縫い付けると、額に口付けを落とした。
「もう少し、横になってな? 今、何か冷たい飲み物、持って来てやるからさ」
山岡さんはそう言うとベッドから降り、寝室から出て行った。キッチンの方から冷蔵庫をパタンと閉める音や、グラスに氷が落とされる透き通った心地の好い音が聞こえてくる。アタシはその音を聞きながら、暫くの間、目を閉じていた。