おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第47章 淫乱珠子の出来上がり!?
「たまちゃん」と平川さんに小声で呼び掛けられ、アタシは顔を上げる。すると平川さんに、「僕のお尻のポケットにスマホが入っているんだけど、取って貰えない?」とお願いされた。だけど、アタシの手は吊皮を掴もうとして手を上げたままだったし、腕を下ろすスペースがなくて、「出来ない」と首を横に振る。
「そっか……。どうしよう。自分で取りたいのは、やまやまなんだけど……」
そう言うと平川さんがチラリと背後を見る。アタシも平川さんの後ろを見るが、女の人が多く、その人達に気を使って手を下ろせないのだろうと理解した。痴漢と間違えられたら大変だものね。縦しんば間違えられなかったとしても。どんな難癖をつけられるか分からないのが、最近の世の中だもの。
「まあ、いいや。連絡がなかったら遅延情報を調べてくれる筈だから。何とかなるよ」と言って、平川さんはアタシを安心させようと微笑んだ。多分、山岡さんが一緒だったら、平川さんの位置には山岡さんが居たんだろうな等と考えてしまう。
(いっちゃんは会社に着いているのかなぁ……)
傍に居て欲しい人の不在は、よりその存在を大きく感じさせて。アタシの頭の中は山岡さんでいっぱいだった。妹さんの事、早く片付けばいいのだけれど。まさか、ずっと戻って来ないなんて事ないよね等と色々と考えてしまい、平川さんの存在をすっかり忘れてしまっていた。
それが、どんなに失礼な事なのか。過去のアタシだったら、自分の存在を忘れられるのがどんなに悲しい事なのか、直ぐに気付いた筈なのに。山岡さんにばかり気を取られていたアタシは、そんな事にも気付かないでいた。
だからなのだろうか。平川さんがこんな事をしたのは。