おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第48章 山岡一徹という男(その3)。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
俺がボーッと考え込んでいると、百合が膝の上に乗って来て、俺の肩を揺すりながら尋ねてきた。俺は我に返り、「何でもないよ」と頭を撫でながら答えると、百合は「よかった」と言って肩に置いた手を首の後ろに回す。密着する百合の華奢な身体。それに手を回し、背中をポンポンと叩くと、百合が俺の頬に口付けた。
「元気になる"おまじない"だよ! パパにこれをすると「元気になった」って言ってくれるの!」
そう言って無邪気に何度も俺の頬にキスをする小百合。モリリンと出会う前の俺だったら、元気になっていたかも知れないけど、今の俺にはあまり効果はない。俺を元気に出来るのは、不在の恋人・モリリンだけだ。
(あー……。俺ってかなりモリリンに依存してるかも)
今更だけど、俺ってのめり込む性質(たち)だったんだなと、改めて思う。あの女の時もそうだった。のめり込んだ挙句、裏切られて……。復讐のつもりであの女を犯して……。
もし、モリリンが俺を裏切ったら、俺はどうなってしまうんだろうか。
いつも一緒に居てくれて、有頂天になっていたけれど、冷静に今の状況を考えて見れば、モリリンの周りには彼女を想っている男が二人もいるのだから、いつ彼女が心変わりするか分からないワケだ。