おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第48章 山岡一徹という男(その3)。
案の定、小百合は首を横に振った。
「誰にも言わないから、お兄ちゃんだけに話してみ?」
安心させる様に笑みを浮かべながら、頭を撫でる。ずっと小百合の目を見つめて。だけど、強情な小百合は、中々口を割らなかった。
「お兄ちゃんに言えないなら、家に帰れ」と冷たく突き放すと、小百合は泣きながら「嫌だ」と俺に縋りつく。「なら、ちゃんと話せよ」と言うと、しゃくりを上げながら小百合は口を開いた。
「ママに……。ママが……。小百合がいい子じゃないからって……。……っく」
やっぱり。何となくそうではないかと思ってた。でも、何で? ずっと良い母親をやっていたのに。少なくとも、俺が家を出るまでは、甘やかし過ぎではないのかと思うくらいに、小百合を可愛がっていた筈だ。
俺に預けるのは、一緒に居ると罪悪感を持つからなのか? それとも、一緒に居ると手を上げてしまうから? 親父に任せたらバレるから? でも、何で俺に預ける? どう言うつもりだ? 次から次へと疑問が浮かぶ。
先週よりも増えた痣。それはこの一週間で付けられたものだと言う事だ。婆さんの具合が良くならない以上、再び俺に預ける事になると分かっていて、付けたのだ。
(俺に対する当てつけ?)