おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第48章 山岡一徹という男(その3)。
どちらにせよ、このまま放っておくわけにもいかない。親父にもきちんと話すべきだろう。その前に、百合と話をしなくてはならない。あまり話したくはないけど。小百合の兄として、最悪の事態になる前に、何とかはしてやらないと。
この問題が片付かなければ、俺とモリリンの平和でラブラブな日も戻って来ない様な気がする。そう思った俺は、この問題を片付けるべく、実家に一時的に帰る事にした。
モリリンに謝りのメールを打ち、必要な物を鞄に詰める。翌日は、小百合の気分転換にと、百合が帰宅する時間までの間、遊園地に連れて行き遊んでやった。
小百合は始終ニコニコとしていて、母親に虐待されている等、微塵も感じさせなかった。俺はそれを「健気だ」と思って不憫に思った。
確かに甘やかされて我儘で生意気な所はあるけれど。「躾」と言っても限度がある。つい最近まで、自分を甘やかしてくれていた母親から酷い仕打ちを受けて、どんな想いをしたんだろう。誰にも言えなくて、一人で耐えていたのかと思うと胸が苦しくなった。そんな風に見ていたから、俺は何気ない違和感に気付かないでいた。
陽が傾き、「そろそろ、お家に帰ろうか?」と言って手を差し出すと、小百合は嬉しそうに俺の手を握る。「早く帰ろう」と言って、俺の手を引っ張りながら、走り出す小百合。