おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第50章 【番外編】真夏の出来事(その1)。
「僕は荷物を片付けてからにします。たまちゃんは? 良かったら僕が荷物を運ぶから、キミは行ってくれば?」
平川さんはそう言うと、アタシに手を差し伸べる。泳ぎたいのは山々だけれど、何だか申し訳なくて、アタシは自分も片付けてからにすると伝えた。
「そう? じゃあ、早く片付けて泳ぎに行こうか?」
「はい!」
平川さんの言葉に元気よく返事をすると、平川さんは笑って「いいお返事」と言って、アタシの頭を撫でた。それを近くで見ていた坂内部長が、「平川、狡いよ。僕も森脇さんの頭を撫でたい!」と言い始め、ぐりぐりとアタシの頭を撫でる。
「ちょっ! 部長、止めて下さい~……髪の毛がぁ……」
ただでさえ潮風に煽られてグチャグチャの髪が、二人の撫で回しによって更に酷い事になってしまった。それなのに、部長も平川さんも「大丈夫、大丈夫! 少しくらい乱れていても、森脇さんは可愛いから!!」と言って、更にわしゃわしゃと撫でる。何だか、アタシはワンコ扱いされている様な気がしてならない。
「んん? そうだねぇ。森脇さんは、AD部皆のマスコットと言うか、ペットだよね」
「酷いです。人間扱いして下さい……」
ぐちゃぐちゃにされた髪を手櫛で整えながら、お二人を睨んでそう言っていると、先にコテージに荷物を運びに行った高槻さんの声が後ろから響く。
「人間扱いして欲しかったら、もっと仕事を覚えたまえ」