おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第50章 【番外編】真夏の出来事(その1)。
「はっ……はいっ!!」
高槻室長のちょっと冷たい感じの声音に、アタシの背中はビシッと伸びる。そんなアタシを見て、坂内部長は眉尻を下げて笑うと、室長に向かって「ここに居る間くらい、仕事の話はやめないか?」と言った。
「何を仰っているんです? ここに彼女を誘い出す為に、「これは仕事だ」と言って強制的に連れて来たのは部長じゃありませんか?」
「えっ? 僕、そんな事言った?」
室長の言葉に部長は、身に覚えがないとでも言うようにキョトンとした顔をしてアタシを見る。確かにそう言われていたアタシがブンブンと頭を上下に振ると、部長は苦笑いを浮かべながら「ごめんね。仕事と言うのは嘘なんだ」と言って、掌を合わせた。部長は「仕事だ」と理由を付けて連れ出さないと、きっと休みの間ずっと、アタシは家に引き籠っているだろうと思ったらしい。
まあ、確かに。どうしても出なければいけない理由でもなければ、家に引き籠っていたかも知れない。それか、両親と一緒に、祖父母に会いに行くくらいだっただろう。
「いい年して、両親にべったりなのか? キミは」
そう言って高槻室長が、冷ややかな目でアタシをチラリと見る。そりゃあ、友達もいないですし。家族以外の誰かと泊まりがけで出掛けるなんて、高校の修学旅行以来ですし?
「友達が居ないのに修学旅行は辛かったんじゃないの?」
「別に……。先生が一緒に回ってくれましたから……」
「ええ⁉ それじゃあ、羽目を外せないじゃない?」
「羽目を外す必要なんて、ありませんよ。学ぶ為の旅行ですよ? 先生があれこれ説明して下さって、とても勉強になりましたから……」
「そっかぁ……。たまちゃんって真面目っ子だったんだね……」