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第50章 【番外編】真夏の出来事(その1)。


「真面目じゃイケナイんですか?」

 アタシが平川さんにそう尋ねると、平川さんは首を横に振って、「真面目でよかったよ」と言ってくれた。平川さんの言葉に、坂内部長も高槻室長も、うんうんと頷く。

「不器用だが、真面目で一生懸命なのがキミのいいところだ。だが、そろそろ「大人の不真面目さ」も身に付けなさい。そうでないと、いつか折れるぞ?」

 高槻室長は、そう言いながらアタシの頭を軽くポンと撫でると、アタシの鞄を持ってくれる。切れ長で冷たそうな目と、滅多に笑わない整った顔の室長に、初めの頃はビビリまくりのアタシだったけれど、一緒に仕事をしていく内に、室長は優しい人だと知った。室長はアタシの事を不器用だと言うけれど、室長だって結構不器用だと思うんだけどな。対人関係に於いては。

「大丈夫ですよ、室長。そうならない様に、僕等がたまちゃんに色々と教えてあげるんじゃないですか?」

 反対に平川さんは人当たりが良くて、誰にでも合わせられる器用さがある。だけど、意外に強情だったり、強引なところもあるんだよね。デザイン室は意見が分かれた場合、高槻室長が強引に決めてしまうのかと初めは思っていたけれど、意見を聞いて最終的に折れるのは室長の方だ。まあ、平川さんが自分のペースに持っていくのが、上手いだけなのかも知れないけど。

「そうだな。今回のこの旅行でも、森脇には色々と体験して貰わねばならないからな」

 室長は、そう言うとコテージの方へと歩き出す。鞄を持って貰っているアタシは、高槻さんの背中を追い掛けた。次いで、平川さんと坂内部長がアタシの両脇に並んで歩き出した。

「そうですね。荷物を置いたら、早速……」

「あまりやり過ぎないようにね。ここだと逃げる場所もないから、可哀想だからね?」

 室長と平川さんの会話を聞いていた坂内部長が釘を刺す様に言った言葉に、不穏なものを感じる。一体、アタシは何を体験させられるの────!?

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