おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第50章 【番外編】真夏の出来事(その1)。
「うん。アメリカ製の大きなヤツでね。十メートルは余裕なやつだよ。逆に、近くで撃つとたまちゃんだったら、弾き飛ばされちゃうかもね?」
そう言って平川さんは片目を閉じて笑った。水鉄砲で弾き飛ばされるって相当な威力だよね。ちょっと怖い。でも、何でそんな物を持って来ているんだろう。
「まあ、男なんてサバゲ―とか好きだしね。今年は色々と楽しみも増えたし……」
平川さんは意味ありげに笑みを深くしながら、アタシをチラッと見る。意味は分からないけれど、きっとアタシに良くない事の様な気がして、身体が震えた。そんなアタシを見て、平川さんは「大丈夫だよ。たまちゃんを傷付ける様な事は、絶対にないから」と言って、安心させる様にポンポンと頭を撫でる。そして、「テントの設置が終わった様だから戻ろう」と、手を差し伸べてくれる。アタシがその手を取ると、平川さんは足元に気を使いながら、ゆっくりと歩き出した。
洞窟の入口を出ると、走ってきた下出が、アタシ達の姿を見るなり残念そうな声を上げる。「自分も雑ざりたかったのに」と。平川さんはそれに、「残念だったね」と笑顔で返し、下出の耳元で何かを囁いたけれど、波の音で掻き消されてアタシには聞こえなかった。しかし、下出が満面の笑みを浮かべて頷いたところを見ると、彼にとっては良い事を言ったのだろう。嫌な予感しかしないけど。
初めて会ったその日に、ファーストキスを奪われた下出には、良い感情がない。チャラチャラしてるし。仕事が出来るから、見習わなければならない部分はあるんだけど。どうも好きになれない。
それにしても、意外だった。下出はてっきり彼女と旅行に行って、不参加だと思っていたから。