おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第51章 【番外編】真夏の出来事(その2)。
「我々は君を気に入っている。他人からの好意は未だ信じられないか?」
高槻室長はそう言うと、目を細めてアタシの唇をすっと撫でる。お刺身を盛る為に冷水で冷やした指先は冷たく、そしてちょっぴり生臭かった。でも、雰囲気を壊すのは申し訳なくて、何も言えない。そうこうしている内に、盛り付けは終わった様で。キッチンで他のお料理の準備をしていた平川さんが、グラスを載せたお盆を持ってやって来た。
「凄い綺麗な盛り付けですね。流石、デザイン部の室長です」
グラスを並べながら、アタシの全身を見て平川さんが感嘆の声を上げる。室長は「当然だろう?」と、満足気な笑みを浮かべると、入れ替わりにキッチンへと戻って行った。
「たまちゃん。吃驚しちゃったよね。ごめんね。どうしても僕達、キミにこういう事してみたくてさ……。他の人はどうかは分からないけど、僕の中では男のロマンなんだよね」
「心配すんな。王子だけじゃないよ。俺もモリリンの身体で「女体盛り」やってみたかったんだから」
平川さんの声を追い掛ける様に、山岡さんが現れて料理を並べながら言う。山岡さんは、アタシの全身を舐め回す様に見ると、ペロッと唇を舐めて「うまそう」とボソッと呟いた。
お刺身は坂内部長と高槻室長が釣りで獲ってきたものらしい。そりゃあ、新鮮なお魚は美味しいだろうと思うけど。果たして裸の上にも盛られた料理が美味しそうに見えるのだろうか。甚だ疑問である。
「色んな意味で「美味しそう」だよ。全部美味しく頂いてやるからな?」
そう言うと山岡さんは何か含みのある笑みを浮かべてアタシの頭を撫でる。皆さんで美味しく食べるのは良いとして、アタシの食事はどうなるのだろうかと、自分の食事が心配でこれから何が起こるのか、考えもしなかった。