おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第51章 【番外編】真夏の出来事(その2)。
とろとろに蕩け切った頭のまま、いつの間にか眠りに就いてしまった様で。気が付けばベッドの上に居た。誰かが運んでくれたのだろう。服は着ていなかったけど。アタシは起き上がると、パレオを身体に巻き付けて階下のキッチンへと向かった。喉が渇いたから水を飲もうと思ったのだ。
廊下に出ると真っ暗で。月明かりが窓から差し込んでいた。リビングには誰か居るのだろうか。吹抜には灯りが点っていて、アタシはそれを頼りに暗い廊下を歩く。階段を下りる前に下を覗き込むと、皆さんがアラレモナイ姿で転がっていた。と言っても、高槻室長と坂内部長の姿はない。きっとお二人はお部屋で休んだのだろう。そう考えると、アタシを運んでくれたのは、お二人なんだろうなと気付いた。
アタシは皆さんを起こさない様に、そっと足音を忍ばせてキッチンに行くと、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。"パキン"と言う音と共にキャップが廻る。それを開け、冷たい水を喉に流し込んでいると、眠っていた下出が起きて来た。
「俺にも水……」
そう言って手を差し出す下出。アタシは「冷蔵庫から自分で出せば」と言ったけれど、下出は一口だけで良いから、新しいのは開けたくないのだと、アタシのペットボトルを奪った。下出はシンクに寄り掛かって一口水を飲むと、アタシにペットボトルを返してくれた。意地の悪い下出の事だから、ゴクゴクと飲み干してしまうのかと思っていたけれど、本当に一口で良かったみたい。あっさり返された事に、ちょっと拍子抜けした。
「何だよ。もっと飲んでも良かったのか?」
驚いた顔をしたアタシが不服なのか、不機嫌そうな顔をして下出がそう言った。駄目だと言う様に首を振ると、ふっと下出が笑った気配がした。顔を上げて見ると、見た事もない目をした下出の顔がそこにあった。