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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第51章 【番外編】真夏の出来事(その2)。


「いや、防犯の為に林の中にもカメラが設置されているんだよ。それと、これ……」

 そう言うと坂内部長は、リモコンを操作して何かを浮き上がらせた。ドローンだ。

「これで監視をしているから、ズルは出来ないぞ? まあ、したくても当たったら溶けちゃうから分かっちゃうけどね!」

「それじゃあ、ルールは分かっていると思うが、服が全て溶けてしまったら負けだ。「生き残った者が勝ち」の単純なゲームだ。他には何でもあり。兎に角、生き残れ!それだけだ」

 高槻室長がそう言うと、皆、鼓舞する様に大きな声を上げる。アタシ、生き残れるかなぁ。動きはトロいし心配だよ。アタシが不安そうにしていると、山岡さんが声を掛けてくれた。

「大丈夫だって! どこかにずっと隠れていてもいいんだぜ? 兎に角、「何でもあり」だからな」

 そう言ってにっかり笑う山岡さん。そう言われても不安しかないよ。運動だって苦手だし。

「モリリンの武器の利点は、簡単に水が補充出来るところだ。後は自分で考えてな?」

 山岡さんはアタシの頭をポンポンと撫でると、林の中に姿を消した。気が付けば、皆さんは既に林の中へと行ってしまったらしく、残っているのはアタシと坂内部長だけだった。部長は、ニコッと笑って「どうする? 棄権するかい?」と尋ねて来る。アタシが首を横に振ると、部長は「そうか」と笑って頭をポンポンと撫でる。

「それなら、初めての森脇さんにはハンデをあげるよ。ほら、これ……」

 そう言って部長が差し出してくれたのは、インカムだった。坂内部長は、それをアタシの頭に取り付けながら、「これで、僕がキミに指示を出してあげる。どこから誰が近寄って来ているかを教えてあげる。それくらいは許されるだろう。後は、「森脇さんの腕次第」だよ?」と言って、送り出してくれた。

 アタシは部長にお礼を言って、林の中を目指す。こうして、アタシの戦いの火蓋は切られたのだった。

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