おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第10章 山岡一徹と言う男(その1)。
(ひぇー!! ま、まだ心の準備が出来てないのにー……)
そう思った時には、オフィスの中に引き摺り込まれていた。山岡さんに背中を押され、既に出社されていた平川さんと川上さんの前に立たされる。
頭の中で、シミュレーションした筈なのに。でも、そのシミュレーションでは、全員揃っていたワケで。未だ、高槻さんや坂内さん、下出の姿がないって事は、また謝らなければいけないワケで。
予想外の出来事に、頭が真っ白になってしまい、上手く言葉が出てこない。アタシは泣きそうになりながら、俯く。
すると、平川さんと川上さんは、椅子から立ち上がり、アタシの前まで来て足を止めた。
「おはよう。たまちゃん。よく来てくれたね」と言って平川さんが、頭をポンポンと撫でてくれ、川上さんが「よかったぁ。来てくれないんじゃないかって心配してたんだよぉ」と相変わらず、のんびりとした口調で言いながら、アタシの頬を指先でちょんと突いた。
取り敢えず、無視されなくてよかったと安堵するが、皆さんに心配を掛けた事を謝らなければと、気ばかりが焦って、謝罪の言葉が出てこない。
アタシの焦りを感じたのだろうか。山岡さんが、「肩の力を抜きんしゃい」とお道化ながら言って、両肩をモミモミと揉む。