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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第10章 山岡一徹と言う男(その1)。


「ちょっ!? どこに行く気?」

 そう言って、逃がさないとばかりにアタシの前に立ち塞がる山岡さん。

「か……帰りますっ!! アタシがいたら皆さんに迷惑が……」

 アタシは、行く手を阻む山岡さんを避ける様に身を翻(ひるがえ)したが、川上さんがその前に回り込む。

「折角、来たのにもう帰るの? お茶を飲んでから帰っても遅くはないよぉ? ね? 王子」

 川上さんはそう言うと、平川さんに目配せをする。平川さんは、「そうだね。今、お茶を淹れてくるね」と言って、足早に部屋を出て行ってしまった。平川さんの姿が見えなくなると、アタシの緊張は一時的に少しだけ緩和し、思わず安堵の溜息が出る。

「なるほどぉ……。"モリー"は、イケメンと言うより王子が苦手なのかぁ」

 そう言って川上さんが、ふむふむと思案する様に腕組みをして一人で頷いている。

 って言うか、「王子」って平川さんの事なのだろうか。昨日もそんな事を言っていたな。確かに、顔もスタイルも完璧で王子系。白タイツのバレエの衣装すら、平川さんなら違和感なく着こなせそうだ。

 いや、それはそれでどうなのだろうか。いやいや、そんな事を思ったら、バレエの演者さんに失礼じゃないのか? そんなどうでもいい事を考えるアタシ。

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