
おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第10章 山岡一徹と言う男(その1)。
アタシは自分の担当が、山岡さんと川上さんだと知って、少し安心した。
平川さんだと完璧過ぎて、多分、落ち着いて仕事に集中出来ないから。高槻さんも隙がなくて、緊張してしまう。その点、お二人は何故だか親しみやすいのだ。
多分、さっきのお二人のじゃれ合いや、言葉遣いなんかでそう感じるのかも知れない。
因みに下出の研修担当は、平川さんなのだそうだ。平川さんはデザイナーだし、下出は自分で企画しデザイン画を起こしてプレゼンをしてみせた実績があるから、平川さんの下につける事になったそうだ。
入社早々、実力を認められるなんて、下出って凄いヤツだったんだ。でも、アイツがアタシにした事は、許せないけど。寄りにも寄って、アタシのファースト・キスをアイツが奪ったのだから。
コミュ障のアタシでも、「ファースト・キスは好きな人と……」と淡い夢を抱いていたのだ。それをアタシを馬鹿にした様に見ていた、下出に奪われたのだ。許せる筈がない。
怒りに肩を震わせているアタシを見て、山岡さんがポンポンと肩を叩く。「気楽にやろう」と言って笑い掛けてくれる。どうやら、緊張して震えていると勘違いされたらしい。
