おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第10章 山岡一徹と言う男(その1)。
「怖い事なんか、ないからね? んじゃ、早速、研修を始めよう」
そう言って、山岡さんはアタシの腕を掴むと歩き始める。他の皆さんの業務の邪魔にならないように、他の部屋で研修をするらしい。
山岡さんに連れて来られた場所は、同じ地下フロアにある、小さく殺風景な部屋だった。部屋の真ん中に、事務机とパイプ椅子が二脚、ぽつんとあり、部屋の隅にも同じ様な事務机があるだけ。
「何だか取り調べ室みたい」とアタシが零すと、「よく分かったね」と山岡さんがにんまりと笑った。
(え? ちょっ!? 取り調べ室で何するの? 何を取り調べられちゃうの?)
アタシが固まっていると、大笑いする山岡さん。って言うか、アタシで笑い過ぎでしょ、山岡さん。
「ごめん、ごめん。俺さ、年の離れた妹がいるんだけどさ。揶揄(からか)うと、超面白れぇの。んで、すんげぇ可愛いの。モリリンも同じ。可愛いから、揶揄いたくなんの」
「アタシは……、可愛いとは……ほど遠いと思いますけど……」
「そんな事ないよ。今からそれを証明しちゃうからね!」
そう言うと、山岡さんはアタシを椅子に座らせた。そして、部屋の隅の机の引き出しから、取っ手のついた黒いケースを取り出すと、それをパカッと開いた。