おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第12章 川上達哉という男(その1)。
会社に戻ると、メイクの仕方を教わる予定だったが、山岡さんに急な打ち合わせが入ったとの事で、もう一人の教育係である、川上さんへとバトンが渡される。
「モリー、宜しくねぇ」と相変わらずのんびりとした口調の川上さん。笑うと可愛らしくて、のんびりした様子にほのぼのとするが、エッチな時は機敏に行動する事をアタシは知っている。油断出来ない人だ。
とは言っても、AD部の皆さん全員が、油断ならないのだけれど。アタシはどうも隙が多いらしく、警戒していても、あっと言う間に彼等の掌の上で踊らされてしまう。今日だって、結局山岡さんにエッチな事をされちゃったし。
アタシは川上さんに連れられ、備品庫に入ると、商品の説明を聞いた。昨日は二つしか説明を受けられなかったからだ。
「"大人のオモチャ"と言っても、女性用と男性用、男女両用、色々あるんだよねぇ」
そう言いながら、川上さんは「う~ん」と考え込む。片っ端から説明してくれればいいのに。どちらにしろ、全て覚えなければ、仕事にならないだろうし。
「モリーは何に興味があるの?」
突然、そう尋ねられてアタシは答えに詰まる。絵を描く事とか、詩を書く事と言ったら、笑われるだろうかと考えてしまう。