おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第12章 川上達哉という男(その1)。
「モリーは自分のどこに自信がないの?」
川上さんは、突然アタシの方に向き直ると、アタシをジッと見つめて、そう尋ねてくる。アタシはどう答えていいのか分からず俯くが、川上さんはどうしても知りたいからと言って、「言えないのなら紙に書いて」と、隅に置かれていた、コピー済の裏紙をアタシに手渡してきた。
「それが分からないと、どうやってモリーに自信を持たせてあげられるか、分からないでしょ?」
そう言うと、ジャケットの内ポケットから、今朝、山岡さんが持っていたペン型のローターを取り出した。「これって、普通にペンとして使えるんだ」と、変なところで感心してしまう。
「感心するのは、そこじゃなくて川上さんの優しさでしょ!」と、心の中でもう一人のアタシが突っ込みを入れた。
研修の教育係としてなのかも知れないけれど、多分、普通の会社はここまで面倒は見てくれないと思う。その前に、こんなアタシを雇ってはくれない筈だ。それは就職活動をしていた時に、痛い程感じた事だ。
幾ら、坂内部長が人事にごり押しをしたからと言って、会社に利益を齎さない者を飼っている余裕等、今のご時世ではないだろう。