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短編集2

第3章 万華鏡

あれから何年も経って、俺は元々いい家柄に生まれたことと、それなりの容姿に恵まれたこともあってそこそこの大学生活を送っている。



つるむ友達だっていっぱいできたし、彼女だって途切れることなくいて、困ることはなかった。







だから昔、親同士が決めたあの約束事はもう俺の中には残っていなかった。









一輝の家と俺の家は隣同士で親同士もすごく仲が良くてお互いの子供を婚約者にしよう!っていうふざけた誓いなしにも、俺たちはいつも一緒にいた。





ひどい喘息持ちの一輝は激しい運動ができなかったから、他の子がサッカーや走ったりしているのを見ながら本を読むのが2人の日課だった。






一輝は何度も申し訳なさそうに俺に他のところへ遊びに行っていいと言ったが、俺はそれを苦痛と思ったことなんて一度もなかった。





でも段々中学校の頃から一輝の存在が疎ましくなっていった。




いつも一緒にいることで変なからかいをされて、友達と遊びたいざかりの俺は思春期もあいまって一輝から距離をとりたくて、






"もう俺は一輝の相手すんの疲れたから"






昔から自己表現が苦手で行動をおこすことも苦手だった一輝はそんな時でさえ何も言わずに本を握りしめていた。






そんな態度にもムカついて、そのまま俺たちは疎遠になった。

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