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捨て犬

第9章 殴らないで

何が悲しいのかな・・





エミが可哀想だから?




俺が可哀想だから?







エミの全てを



抱きしめる自信が



俺にはないから?






火のついてない煙草を
咥えたまま

ただ黙って
俺はピクリとも
動けないまま


どれくら時間がたったのだろう




しばらくすると

エミの小さな声が

聞こえた




「一緒に・・

帰っちゃ・・ダメ?」






「帰るとこねーから
言ってんの?」





「・・・・」





「さっきの男んちに
行けば泊めてもらえるんじゃねーの?」




酷いこと言ってるよな

分かってるよ

でも


止まんねぇんだ




「・・・・」




「さっきの男じゃなくても
誰か探せるだろ
お前、かわいいしさ」



「い・・・いや」



「なにが」



「他のとこは
行きたくない」



鏡を見ると
まだエミは
膝を抱えていた


長い髪で
顔は隠れている


泣いているかもしれない



まだ、震えているかもしれない



「なんで他のとこじゃ
だめなんだよ」



「・・・・・」



ちゃんと言えよ

ちゃんとさ
ちゃんと言ってくれよ

俺じゃなきゃだめだって
俺がいいんだって
言ってくれよ!


俺はこんなに
好きなのにさ


こんな
お前が好きで好きで
たまんないのにさ


なんで



なんで

言ってくれないんだよ・・・




こんなお前でも



お前のこと
好きなのにさ




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