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果てない空の向こう側【ARS】

第9章 ベトナムの空の下へ(翔)

結局、次の日は母さんとスカイツリーに行った。

天気はあいにくの曇り空。

これじゃ、東京の街の眺望も期待できない。

翔「わざわざこんな曇り空の日に来なくても…。」

俺はブーたれた。

母「だって、今日しかないじゃない。」

確かに、俺がベトナムに発つまでの間で、母さんと休みが合うのは今日だけ。

俺はため息をついて、チケットを購入した。

エレベーターに乗り込み、いざ展望台へ。


キラキラと美しい内装のエレベーターは、どんどん標高を高めていく。

俺にとっては、地獄へ昇る棺に思えた。

展望台についてエレベーターの扉が開くと、皆、歓声を上げてどっと流れ出た。

母「翔、すごい眺めだよ!」

母さんが窓に駆け寄り、俺に向かって手招きしている。

翔「いや、いい。」

俺はかたくなに母さんの手招きを拒否した。

母「いいから来てみなよ。国技館が見えるよ!」

母さんは俺の手を取り、窓に引きずって行った。

翔「国技館なんていいよ! 相撲ならテレビで見るから!」

まわりにいた修学旅行の中学生に笑われたが、かまってはいられない。

自分の身は自分で守らなくては。

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