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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

潤「ただいまー。」

仕事から帰って台所をのぞくと、智兄が母さんと一緒にビールを飲んでいた。

母「潤、ご飯は?」

潤「食って来た。」

母「智の冷奴、美味しいわよ。生姜たっぷりで。」

テーブルを見ると、ネギやら生姜が山盛りの冷奴が皿の上にのせられていた。

潤「美味そうだけど、やめとくよ。はい、智兄にスペインからエアメール。」

俺は、郵便受けから持って来た封筒を智兄に渡した。

智「サンキュ。」

潤「それにしてもアナログだね、今時。封書でエアメールなんてさ。智兄の美大の同級生だろ? メールでもSNSでもあるだろうに。」

母「スペインの空気が封入されてるのよ、きっと。」

智「やかましいな、ほっとけよ。」

智兄は、封筒を尻ポケットにねじ込んだ。

俺は、台所を抜けると二階の自室に駆け込んだ。

パソコンの電源を入れると、ビデオ通話を立ち上げた。

スマホで連絡を入れると、パソコンの画面に現れたのは、翔兄。

翔『なんだよ、俺、忙しいんだよ。今日の営業の報告書まとめてたんだから。』

潤「ごめん、ごめん! どうしても、顔見て言いたいことがあってさ。」

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