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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

その直後、俺の言葉の意味を理解した翔兄は、鬼の形相に変化して無言でビデオ通話を切った。

潤「何だよ、何のツンデレだよ…。」

でも、いつも俺に対してクールな翔兄が、合格を飛び上がって喜んでくれた。

俺はベッドにダイブして、クッションを抱きしめた。

潤「あー、もうちょっと翔兄と話したかったな。」

そうつぶやいた時、テーブルの上のスマホが震えた。

見てみると、翔兄からのメッセージ。

『俺の部屋の机の一番上の引き出しの中の小さい紙袋。』

それだけが記されていた。

俺は、翔兄の部屋に行って、指定された机の引き出しを開けた。

ゴチャゴチャと散らかった引き出しの中を探ると、それらしい小さな紙袋が見つかった。

中を開けてみると、出てきたのはタイピン。

ハサミの形をしていた。

潤「なんだよ、これ。中年の理容師がよくつけてるやつじゃん。ダッセー…。」

でも、俺はそのダサいタイピンが輝いて見えた。

タイピンを手に自室に戻ると、スマホに新しいメッセージ。

『潤が就職決まった時に買ったんだけど、新人はすぐにハサミを持たせてもらえないって俺知らなくて。

ずっと渡しそびれてた。

しっかりやれよ。』

翔兄からの二通目のメッセージを読んで、涙があふれてきた。

潤「わかったよ、俺、しっかりやるよ…。」

俺は、タイピンとクッションを抱きしめながら、いつの間にか眠りについていた。

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