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果てない空の向こう側【ARS】

第11章 果てない空の向こう側(智)

母「智! 家で、待ってなさいって言ったじゃない!」

俺に気がついた母ちゃんは、小学生を叱るように俺を叱った。

智「雅紀が、雅紀が父ちゃんになるってのに、おちおち家でなんて待ってられるかよおっ!」

そのやりとりで、雅紀は俺の存在に気がついた。

雅「智兄、生まれたよ! 女の子、かわいい女の子が生まれたよ!」

雅紀が赤ん坊を抱いたまま俺のもとに駆けよってきた。

赤ん坊は、赤というより紫というか、ちょっと水分で、むくんで白というかなんとも見たことない色をしていた。

そして、全身全霊で体を震わせ泣いていた。

雅紀が俺に赤ん坊を渡そうとしたら、母ちゃんが血相を変えて飛んできて、手を洗わせた。

手洗い消毒を済ませて、あらためて赤ん坊を抱いた。

智「ちいちぇえ…。」

赤ん坊は、小さくて、軽くて、そして熱かった。

小さい小さい体で、すごいエネルギーを発していた。

口を開け、のどの奥まで、体全体を響かせ泣いていた。

智「生きてる…。」

雅「当たり前じゃん、今生まれたところだよ。」

そう言って笑う雅紀の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

雅紀は父親の顔をしていた。

俺は赤ん坊を雅紀に返した。

みっちゃんはまだ出産直後でまだ処置があるらしく、俺は分娩室を追い出された。

廊下の長椅子にどかっと腰をおろして、息をついた。

俺らの父ちゃんも、きっと雅紀と同じ顔をしてたにちがいない。

俺はそう思った。

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