方位磁石の指す方向。
第7章 scene 6
…男子の部屋だ。
落ち着いたカラーで纏められた部屋は
少しだけ散らかっていて、
男子特有の匂いが充満していた。
…や、俺も男子だけどね。
「…二宮?立ってないで
座ったら?」
「はっ、はいっ」
「っふふ、なんで敬語?
いつも通りにしてよ。」
翔さんが床を指でとんとんって
した場所に座った。
それから、俺を後ろから抱き締めた。
っ…!…これ、やばいっ…
俺、襲われるっ…!?
サーっと血の気が引いていく。
「ね、二宮、こっち向いて」
「な…んんっ、」
言葉は唇で遮られて、
そのまま床に押し倒された。
ちゅ、ちゅ、って短いリップ音が
部屋に響く。
「…二宮可愛い、」
「っ…!!」
やっぱりこれはやばいヤツだ!
いやでも、翔さんは
そんなことしないはず…っ!
「…前も、こんなふうにしたよな、」
「へっ…!?」
ベッドにぽーんって投げられた。
翔さんの匂いが染み付いたベッド。
翔さんの…匂い…
それから微かにお日様の香り。
「…ほら、お前が智くんと
喧嘩したとき、こうやって俺は
お前にキスしたじゃん。
覚えてない?」
「っ、あ、あれ…」
「好きだよ、」
ちゅ、とさっきよりも
深いキスをされた。
…待って待って待って。
これはマジでやばい…。
まだ、早い…っ!
「…二宮、男の部屋に
ホイホイ着いてきちゃ
だめだからな?俺だけだぞ?」
「っ…はいっ!」
ぱっと手を離されて、
優しく抱き締められた。
…よかったぁ。
翔さんはそんなことする人じゃ
ないもんね…。
少しだけ疑ってた俺が
バカみたい。