方位磁石の指す方向。
第7章 scene 6
拒絶された。
そう思ったんだ。
二宮を俺のベッドに押し倒して、
キスをしたとき。
二宮の手が、俺の腕を
押し返そうとしていた。
でも二宮の力じゃ、
そんなの到底無理な話で。
…いやだったのかな、とか
なんでだろう…って
ずっと考えてしまうんだ。
まだそういうことは
早いと思ってる。
大切だから傷付けたくない。
幸せにしてやりたい。
愛してあげたい。
俺が二宮を汚すなんて
あってはならないことだ。
「…はぁ、」
さっきまで二宮がいた部屋を
見渡した。
二宮がいた痕跡なんて
どこにもない。
ただひとつ、あるとするならば、
シーツにいくつものシワがあることくらいだ。
それでも。…それでも二宮がいた
痕跡を俺は探してしまう。
「…だせぇ…」
自分で思った。
俺って、超女々しいヤツじゃん。
こんなに必死になってしまうくらい
俺は二宮のことが好きで。
…近付きたいけど
あの笑顔を壊したくないから
今以上の関係と距離感を手放したくない。