
方位磁石の指す方向。
第7章 scene 6
「あ、」
二宮のものと思われるマフラー。
……。
『忘れちゃった』とか言って、
また戻ってきてくれないかな…なんて…。
…俺が望んだことなのに…なんで。
なんでこんなにも、
苦しいんだろう。辛いんだろう。
「…わけ、わっかんねぇ…」
自分の気持ちがわからない。
…風邪のせいだ。
全部全部、風邪のせいだ。
「…知らねぇ…」
震えるスマホを無視して、
布団を被った。
…それでも
眠りになんてつけるわけなく。
「……あー…」
…メールじゃちょっと、
味気ねぇんだよな。
なんて、画面を見ながら
ひっそりと溜め息をつく。
『明日学校に来なかったら
許さないから!(`3´)』
……ふは。
…コロコロ変わりすぎ。
なんて思いながらも
やっぱり俺は二宮が好きで。
さっきまであんなに怒ってたけど
こんなひとつだけの言動で
二宮を許してしまう。
…ほんと俺、
二宮のこと好きなんだな。
いつも思う。
…俺がもし、
二宮を好きになってなかったら。
二宮が俺を好きになってなかったら。
今頃俺は、どうだったんだろうか…?
ただひとりの友達として、
後輩として見ていた…?
…いや、
二宮が女でも男でも
俺は二宮を好きになってた。
多分…。
