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方位磁石の指す方向。

第7章 scene 6






「ぅわっ!…っとと、」


崩れかけた資料を頑張って抑えたら
落ちそうになった。

危ない危ない。


一番上の棚に手が届かなくて
うーんうーんって
ひとりで唸っていたら。

突如聞こえた軽快な音楽。

びっくりして、音の鳴る方に
体を向ければ。


「よっ」

「じゅ、潤くんっ」

「和の身長じゃ届きそうにないと
思ってさぁ…?
来ちゃったんだよねー」

「むっ、確かに届かないけど
口に出さなくていい…」

「ふふ、ごめんごめん。
ね、手伝うから。資料貸してみ?」

「ん、」


一番分厚い本を潤くんに手渡す。

そうすりゃ、すいすいと
元の位置へと戻る資料。

…さすが、運動部…。


「ふぃー、結構疲れんな、これ。
和ひとりじゃ到底無理だろ。」

「むっ、そうだけどー…
さっきから一言余計〜」

「ふは、ごめんごめん。」

「さっきも同じようなこと言ってた〜」


ぷっと頬を膨らませて、
ソッポを向いた。

そうしたら、
頭に微かな重み。


「ふふ、さらっさらだな。」

「っ、んなっ、なっ…!!」

「…?
あ、これもしかして
翔先輩限定だった系のヤツ?」


いたずらっぽく笑い、
なんも言えない俺に
「帰ろ」って手を差し出してくれた
潤くんの手を優しく握った。

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