方位磁石の指す方向。
第7章 scene 6
…あったかい。
そんなふうに思いながら、
翔さんに見られたらまずいなぁ、なんて。
でも浮気してるわけじゃないし、
そもそも潤くんは友達。
友達以上ではみれないもん。
「んじゃ俺、これからバイトだから」
「あ、そうなんだ。
頑張ってね。また明日!」
潤くんとわかれて、
雪がうっすら積もった道を歩く。
……。
ここの道って、
こんなに広かったっけな。
いつも翔さんと歩いてたから
気が付かなかったけど、
今歩いてるとすごい広い。
…隣に翔さんがいないだけで
こんなにも寂しいんだなぁって思いつつ
俺はほんとに翔さんが好きなんだなって
今更ながら実感してた。
「…はぁ」
溜め息さえも白い息に変わる。
また雪降るのかな、なんて
空を見上げながら歩いてたら、
滑ってコケてしまった。
「いったた…」
周りに誰もいなかったからいいものの、
誰かいたら俺ほんとに恥ずかしくて死ぬ。
…翔さんなら。
翔さんなら、なんて言うかな。
からかって笑ってくれるかな。
それとも、
バカだな、二宮は。って言って
俺の手を握ってくれるかな。
そんなこと考えてたら、
ますます会いたくなってしまった。