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方位磁石の指す方向。

第7章 scene 6






むーって唇尖らせて、
翔さん家の前をうろちょろする。

…会いたくて来ちゃったけど、
迷惑、だったかなぁ。


インターホンを押すのにも
時間がかかって。

櫻井

と書いてある表札を
じっと見つめながら思った。


…昨日も来た。

「でも、いいよね、」


独り言にしては大きい声。


意を決してインターホンを押せば、
はーいって翔さんの声。


やばいっ、緊張してきたっ…!


「…はーい、って…二宮?
なにしてんの」

「はっ、はひっ…あいっ、会いたく、てっ…」


噛み噛みだったけど、
翔さんは笑って。

上がっていいよって、
言ってくれた。


「…あの、翔さん…?」

「ん?」

「迷惑じゃ、ない…?」


んー、って考えてから、
俺の目を見て。


「迷惑…」

って言いかけて。


やっぱそうだよなぁ…なんて
思ってたら。


「なんて、言うと思う?」


って、悪戯っぽい笑みを浮かべて
俺の頭を撫でた。


「…ふふ、ありがと、嬉しい…」

「俺も二宮が会いに来てくれて嬉しい。」



部屋に入れば、
勉強してる途中だったのか、
参考書が机の上に乗っていた。

…やっぱ、邪魔だったかなぁ…


悪いことしちゃった、て思ったけど
でも、でも。

翔さんに会いたかったんだもん。

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