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方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7






「あぁ、そうだ。
和に聞きたいことあったんだ。」

「ん?…なにこれ。」

「バイト。一緒にどう?」

「──…え、なんで?急に?」

「や、今俺してるバイトがさ、
人手不足で…和もどうかな〜って。

あ、給料プラスになるよ?
今人手不足だから。」

「ふぅん…。
何時から何時くらいまで?」

「そうだなぁ…学校終わってから
三時間ってとこ?」

「さんじっ…!?」


ゲーム何回できると思ってんの。


俺がそんなに嫌そうな顔してたからか

「そんな顔するなよ笑
強制じゃないからさ?」

って潤くんが促す。


…ううん。でもなぁ…。


うーん……

でも、

あぁ……



「考える、一応。」

「そ?よかった。
じゃあいい返事を待ってるね?」


…うっ。

なにこの威圧。


「…うん、」

「じゃあ、そろそろ帰ろっか。」

「へ?もう?」

「もうって…結構経つよ?
かれこれ二時間くらい?」

「ぅえっ!…そんなに!?」

「うん、ほら、帰ろ?」

「ん、わかった」


リュックを引っ掴んで
お会計を済ませてから店を出た。

辺りはすっかり暗くなっていて
お互いの顔がギリギリ見えるくらい。


「んじゃ和、また明日。」

「うん、またね。」


ひらひらと手を振り、
お互い逆方向に歩く。


…寒い。

ぶるっと身震いしてから
くしゅっと小さくくしゃみして。

冷え切ったカイロを握り締めた。


…うわっ。

翔さんからすげぇLINEきてるし。




…返さなくていいかな。

もく随分時間経ってるし。

……返さなくていいや。


翔さんからのLINEに
目を通すこともなく、帰路につく。

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