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方位磁石の指す方向。

第1章 scene 1

二宮side



公園のベンチから立ったら、
見覚えのある背中が
目に飛び込んできた。

翔さん、だ。


また、呼吸が止まる。


この場から立ち去りたいのに、
足が動かない。

嫌だ。怖い。


翔さんも俺をバカにする。


なんとか足は動いた。


――ぱきっ




…あ。


木の枝を踏んだ。


翔さんの方を見たら、
俺を見つけたみたいで、
走ってきた。


俺も走ろうとしたけど、
やっぱり足が動いてくれなくて。


呼吸だけが荒くなる。


「にの、みや、はぁ…」



汗だくになった翔さんが、
目の前にいる。


「ほんっと、バカだなぁ。
補導されるだろ。バカ。」

「…。」


バカバカって、やっぱり言う。

俺のことなんて、
嫌いなんだろ。


智から、もうグループに
入んないでって言われたもん。


「離してよ。」

「だめだ。
お前んちまで送り届ける。」



翔さんは携帯電話を取り出して、
智たちに連絡してる。

智と話してると、
なんだかいきいきしてる。


…知ってる。

好きなんだよね。智が。



わかってるよ。


だって翔さん、
分かり易いんだもん。


「…あぁ、うん。じゃあな。」



ほら、行くぞって、
俺の腕を引っ張る。


「…ごめんなさい。」



ぽそっと放った言葉。


「…おう。」


翔さんの耳には、
ちゃーんと届いてた。

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