方位磁石の指す方向。
第8章 scene 7
「わっ、」
二宮を部屋に招き入れた途端、
背中に抱きつかれた。
「ん?どしたー?」
「こうしてると、
機嫌よくなるから…」
「なんだそれ笑」
「いーじゃん、
減るもんじゃないんだし…」
それに、
って小さな声で続ける。
「翔さんのここは、
俺だけのものなんだし…
他の人にとられちゃやだもん。」
ぴとっとくっついて、
そんなこと言うもんだから。
今胸が、きゅって締め付けられた。
「じゃあ俺も、」
「ぅわっ、」
体を反転させて、
二宮に抱きついた。
俺より一回り小さい体は、
腕の中にすっぽりと収まり。
座るように促せば、
俺の股の間に滑り込んでくる。
かと思えば、
甘えたような声を出して
俺の胸の中に顔を埋める。
だから俺も、
二宮の丸い背中を抱き寄せて、
ゆっくりと目を閉じた。
大切な人がこんなに近くにいる幸せ。
それを噛み締めて、
"今"という瞬間に感謝しようじゃないか。