方位磁石の指す方向。
第9章 scene 8
「ばっかやろー」
「やっ…」
今度は俺も押し倒されて、
翔さんにめちゃめちゃキスされた。
「んーっ…!」
ジタバタもがくけど、
力の差は圧倒的に翔さんの方が上で。
肩を押さえられて、
キスを何回もされて。
「ぶはっ…!」
「…へ?」
目を開ければ、
翔さんが爆笑してて。
「ごめっ、二宮っ…ふふ、」
「え、何笑ってんの。」
「や、わっかんないっ…
あー、腹痛てぇっ」
俺は起き上がって、
翔さんに抱きつく。
「…くふ、なーに?」
「なんでもいいじゃん。
くっつきたくなっただけだし。」
「ふーん?」
首筋に顔を埋めて、
翔さんをもう一度強く抱き締める。
「痛い笑」
「うるさい」
「理不尽。」
「…ふふ。」
密室感にドキドキして、
翔さんの髪から微かに香る
鼻を掠める爽やかな匂いにも
ドキドキしてる。
俺の胸の鼓動が、
翔さんに聞こえちゃうんじゃ
ないかってくらい、
俺は今ドキドキしてる。
「…なー二宮ー。」
「んー?」
「そろそろ帰んなきゃなぁ…」
「んー…そだね。」
「いつ帰る?」
「そのうち帰る。」
「ん。わかった。」
「うん。」
翔さんから離れて、
帰り支度を始める。
本当はまだ帰りたくないけど、
時間も時間だし。
「んじゃぁ、そろそろ帰ろうかな。」
「えー、もう?」
「だって寝ちゃったし。」
「んー…」
「じゃあ、またいつになるか
わかんないけど、」
「明日」
「明日は潤くんとの約束があるから
ダメでーす。」
「えぇー…」
ぶーたれてる翔さんに
もう一度キスをしてから、
ひらひらと手を振って。
「またね。」
って、笑顔で言って、
玄関で靴履いて。
……あ。