方位磁石の指す方向。
第9章 scene 8
「ねぇ。一緒に帰んない?」
「…あ?」
一旦翔さんの部屋に戻って、
一応確認。
「今日は、一緒に帰んないの?」
「いや、俺んちここですー。」
「…そうじゃなくて…」
「…ふふ、帰りたい?」
少し意地悪してきた。
…もー。
「一緒に帰ろうって言ってるの。
気付いてよ、それくらい。」
「…ふふ、わーってるわーってる。
俺二宮帰っちゃったかなーって
考えてたんだよ。」
「呼び止めてくれたら
よかったのにー…。」
「えぇー。」
だって二宮から聞きたかったし。
なんて。
そんなカッコいい顔して、
そういうこと平気で言わないでよ。
時々、心配になるんだよ。
だからそういう事言うの、
俺だけにしてよね。
少し前を歩いてる翔さんの肩に
とんって頭をぶつけた。
「ん?なんですかー?」
「…なんでもない。」
「えー…」
「なんでもないけど、
翔さんにくっつきたくなった。」
頭をぐりぐりしてから、
空いてる翔さんの手を握る。
「…んふふ、なに。可愛い。」
「…ふふ。ありがとう。」
素直に気持ちを伝えることは、
俺にとってとても難しい。
いつも、遠回りしてばかりの
俺にとっては困難なんだ。
「…んじゃあ、このへんか。」
なんて言いながら、
手を離す。
「えー、家まで行ってくれないの?」
「え、行ってほしい?」
「俺連れ去られちゃうよ。」
「ないない笑」
「ばあか。」
「ふふ。うそうそ。」
また俺の手を握る翔さんの手。
最近あったかくなったと思ったら、
寒くなったから、
翔さんの手の温度は本当に心地がいい。