方位磁石の指す方向。
第9章 scene 8
「翔さん」
「ん?」
「今度はちゃんとしたデートしよ。」
「んー、気が向いたらね笑」
「むー…」
「っふふ、うそ。
そうだなぁ…もう春休みも
終わりだしね。」
「…翔さん、受験生でしょ?」
「ん?そーだね。
でも二宮のこと、
大切な気持ちは変わらないからさ?」
「っ、当たり前…」
可愛くないヤツ…
大切なことほど、
俺は素直に言えない。
声が大きいのは、
嬉しかったからだよ。
…気付いてる?
「…ふふ、そんなこと言って、
ほんとは嬉しいくせに。
素直にじゃねえなぁ、ほんとに。」
「っわ、」
ぐいっと腕を引っ張られて、
翔さんの胸の中に収まる。
「…脱臼するって、もー…」
「そんな嬉しそうに言われてもー」
「…うるさい。」
「はいはい。」
ポンポンと頭を撫でられ、
顔が赤くなる。
意識した途端、
余計に鼓動が早くまる。
…あーもう、
心臓持たないってば。