方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
櫻井side
離れていくかと、
不安になった。
…わかってる。
離れてなんかいかないって。
でもどこかで、
まだ信じ切れない自分がいたんだ。
泣きそうな二宮を見た時、
相当傷付いたんだな、
ってこっちも胸が痛くなった。
ごめん、とずっと頭を下げて、
俺に抱きついて。
…そうだ。
俺しかいない。
二宮を守れるのは俺しかいない。
そう自惚れてしまう。
「翔さん、またね。」
さっきまでとは
打って変わって元気な二宮に、
手を振り家を目指して歩く。
…恋は、厄介だ。
何も手につかなくなる。
…恋煩いってヤツだろう。
ふとした瞬間も、
二宮のことしか俺の頭の中にはない。
それはいつでもそうだ。
きっとこれからもそうなんだろう。
「…ただいま。」
母さん、まだ帰ってきてないかな。
今日は仕事、夜勤だって
言ってたっけ…。
となると父さんも、
遅いんだろう。
リビングのテーブルに一枚の紙切れが
置いてあり、目を通す。
…ふたりとも出張ね…
よく子供置いていけるわな。
…そうか。
俺はもう、子供じゃないのか。
ふー、と思わず吐息が漏れた。
わかっていたことだ。
高校を卒業したら、
家を出てやる。
あわよくば、二宮と───だなんて。
離れていくかと、
不安になった。
…わかってる。
離れてなんかいかないって。
でもどこかで、
まだ信じ切れない自分がいたんだ。
泣きそうな二宮を見た時、
相当傷付いたんだな、
ってこっちも胸が痛くなった。
ごめん、とずっと頭を下げて、
俺に抱きついて。
…そうだ。
俺しかいない。
二宮を守れるのは俺しかいない。
そう自惚れてしまう。
「翔さん、またね。」
さっきまでとは
打って変わって元気な二宮に、
手を振り家を目指して歩く。
…恋は、厄介だ。
何も手につかなくなる。
…恋煩いってヤツだろう。
ふとした瞬間も、
二宮のことしか俺の頭の中にはない。
それはいつでもそうだ。
きっとこれからもそうなんだろう。
「…ただいま。」
母さん、まだ帰ってきてないかな。
今日は仕事、夜勤だって
言ってたっけ…。
となると父さんも、
遅いんだろう。
リビングのテーブルに一枚の紙切れが
置いてあり、目を通す。
…ふたりとも出張ね…
よく子供置いていけるわな。
…そうか。
俺はもう、子供じゃないのか。
ふー、と思わず吐息が漏れた。
わかっていたことだ。
高校を卒業したら、
家を出てやる。
あわよくば、二宮と───だなんて。