方位磁石の指す方向。
第2章 scene 2
相変わらず翔さんの対応は変わらない。
…なんだよ。
意識してるの、俺だけみたいで
恥ずかしいじゃんか。
「…バカ」
「誰が?」
なんて、俺の顔を覗き込む。
「…っ………なんでもないよっ!」
翔さんのふっくらとした唇が
嫌でも目に入る。
柔らかい感触が
まだ残っている。
覚えてる。
ほんの一瞬の出来事。
初めての、キス。
初めてがあんな形で、
最悪だ。
抵抗なんて、できなかった。
翔さんは悲しそうな顔してた。
瞳の色も、悲しみの色に染まっていた。
それは、翔さんが智に恋してるから。
…わかってる。
だって分かりやすいんだもん。
「…二宮?」
「…ついてこないで!
もう放っておいてよ!」
翔さんの腕を振り払い、
駆け出した。
動悸がするのは、
走ったからなんだ。
恋なんて、していない。
絶対してない。
翔さんなんて、好きじゃない。
「………っ…」
俺が全力で走っても、
現役サッカー部員には負ける。
「にーのみや。」
「………翔さんのせいだよ。」
「は?」
「翔さんが、俺に、キス、するから。
俺、わかんないよ………。
翔さんのこと好きじゃないのに、
翔さんのこと考えると胸が苦しいんだよ…。
どうしてくれんだよ!バカ!」
「…二宮、それって………」
「違う!
好きなんかじゃない!
そんなのおかしい!
絶対におかしい!
翔さんがキスなんかするから…っ
俺、初めて、だったのに…っ」
ポロッと溢れ出た
熱いモノ。